photo credit: A young kid dancing with the instructor at Dance Dance Evolution for Scotiabank Nuit Blanche 2009 via photopin (license)
今年は2人目の子供も生まれたと言うこともあり、ダンスはほぼやらなかった1年となりました。
しばらくは今しかできない子育てを優先し、また落ち着いてきたらできる範囲でクラブに踊りに行ったり、ショーをやりたいと思っています。
今に始まったことではありませんが、昨今はストリートダンスは世の中的にも当たり前のものとなり、プロダンサーが注目を浴びたり、それを目指す子供達も増えています。
子供達の将来の夢の中にプロダンサーという選択肢を持っている子が多くいても不思議じゃない時代です。
今回の記事は特になにかきっかけがあったわけではないんですが、自分の子供がダンスをしたい!って言ったら、自分はどうするのかな〜と考えながら頭の中に言いたいことがたくさん出てきたので書いてみることにしました。
私は特に名の知れたダンサーでもありませんし、ましてやプロダンサーでもありません。ただ趣味でダンスが大好きで続けているだけのサラリーマンダンサーです。(今はやっていませんが、インストラクターは一時期やってました。)強いて言うなら、ストリートダンスが今のように子供達に流行る前から現代までをある意味第3者目線で眺めてきた感はあります。
内容の説得力のレベルは置いておいて、特に無名でもいち意見の発信ができるのがネットだと思っているので、私なりに今のシーンを見て思うことを書いてみました。
目次
はじめに
私はストリートダンスを始めてかれこれ15年が経ちます。今考えるとまだストリートダンスはぎりぎりアンダーグランドと言えるような時代だったと思います。
学生の頃に始めたストリートダンスは今まで経験してきたなによりもハマった趣味だと思います。
社会人時代も含めてダンスを通して青春してきました。
自分の年齢とともにストリートダンスはどんどんとメジャーなものになっていき、特にここ5、6年くらいでキッズ(子供)への浸透率は急速に進んだと思います。
全体としてストリータダンスシーンはこれからも盛り上がってほしいですし、自分たちと一緒に青春時代を過ごし、ダンスの道に進んだプロダンサー(形式はさまざまにしろダンスを主に生計を立てている人達)も応援しています。
現在のキッズストリートダンスシーン
まず、今のキッズ向けのストリートダンスシーンについて私なりに映っていることを書いてみたいと思います。
キッズ向けクラスの増加
まず、現在のキッズ向けのストリートダンスシーンを見ていて思うこと、それはキッズ向けのダンスクラスが鬼のように多いこと、あわせてインストラクターもたくさんいるということ。
これはニーズがあってのことではあるんですが、ストリートダンスが子供向けの習い事化したことが強まり、それに合わせて、こぞってどのスタジオもキッズ向けクラスを増やしたのと、新規参入的に個人でやっている人も増えたと思います。
キッズ向けということでダンススキルがものすごく求められるわけではないので、ある意味大人が少しダンスをかじればできてしまったりもします。
みんなスキルは超一流
私たちがダンスを始めた頃に、今のキッズ達のダンスを目の当たりにしていたら、自分なら自信喪失して次の日にはダンス止めてるような気がします。
昔のストリートダンスシーンを知るおっさんからすれば、ほんとにそれくらい今の子供のダンスレベルはすごいんです。
大人のダンスも進化していますが、やはり目を見張るのは子供(特に中・高生あたり)でしょう。
体はしなりまくるし、疲れを感じない時代ですから、大人もほんとにプロ(毎日ダンススキル磨きをするくらい)でないと勝てないレベルです。
永続きしないダンス
こんなレベルの高いキッズのダンスシーンです。ダンスの大会で成績を残したり、注目されるためにはよほどの努力や才能が必要になってきます。
つまり競争力が激しいわけですから、スタジオの発表会での演技以上を必死に求める子供達も少なくなるのは必然と言えるでしょう。
ある程度踊れるようになるまで(スタジオの発表会などまで)はモチベーションが続きますが、それ以上のモチベーションを導きだす場所を見つけるのが難しい状態になっているんじゃないかと想像します。
もちろん、「ダンスはスキルだけじゃない!」「グルーブだ!」「フェーリングだ!」「自分の踊りができればいいんだ!」などなど、ストリートダンス育ちに大人のインストラクターはこぞって子供達にモチベーションを下げないように指導しているはずです。
でも、どうでしょう。私から見たら、それすらも普通に習得してしまっているようなキッズがごろごろいます。
キッズダンサーはたくさんいます。スタジオの発表会に行けば数えきれないほどの子供達がわんさか踊っています。
でも翌年の発表会に行けばその顔ぶれはほとんど変わっているなんてことも珍しくありません。
ストリートダンスが子供向けに流行っているのは確かですが、継続してやっているのはそこまで多くないんじゃないでしょうか。(これはキッズに限らずですけど)
もちろんやっている子の中には継続する子もいますし、全体の母体からすると辞めてしまう子が多いということだけです。
これは上記に書いたキッズダンスシーンのレベルの高さなんかも少なからず関係しているのではないかと思います。
すでに習い事として一般化したという証拠
ただ、ダンスを継続する子供が多くはない、これについては私は特に違和感(問題)は感じません。
むしろこれこそがストリートダンスが世の中的にメジャーになり一般大衆化し、ピアノやバレエ、野球やサッカーなんかと同じ土俵まで上がってきた証拠だと思っています。
つまり、どの世界でも同じで、やっている人口が多くなれば、競争率が高くなる、そうなると、それなりの練習量や才能が発揮できないとなかなか結果を残せず存在感を出すことができません。つまりモチベーションの継続につながらないんです。
この分析自体、私独自の考えなので、ひとくくりにはできないんですが、あくまでいち意見として。
と、まぁ、いろいろと書きましたが、要は、キッズ向けのストリートダンスは世の中的に習い事の仲間入りを果たしたんだと思います。
そして、その証拠に他の有名なスポーツや伝統的な習い事と同じ現象が起きているというわけです。
キッズ向けのストリートダンスクラスのこれまで
上記に書いた通り、ものすごいスピードで習い事化したキッズ向けストリートダンス。
これ自体には私はうれしいことだと思いますし、なんの問題も感じないわけですが、最初はそのスピードに教える側が追いついていけなかったんじゃないでしょうか。
もともとはカルチャーから育ったダンスなだけに日本では大人のかっこいい遊びだったわけで、対象も大人からスタートしてます。スタジオでのクラスも大人向けだけだったため、スタジオではダンスだけを教えればよかった。
とりあえずキッズが流行はじめたので、スタジオ側としては、とにかく大人向けのダンスレッスンを子供向けにも広げたけど、大人になっていない子供にはダンスする以前に教えなきゃいけないこともたくさんある状態。
ただ、ダンスだけを教えればいいわけではないということに気付かされるわけです。
極端な言い方をすれば、キッズ向けのストリートダンスを教える準備まではできていなかったし、今でもそこに関してはまだ発展途上だと思うんです。
キッズダンスは習い事教室であることを認識するべき時代へ
習い事化したキッズダンス。こうなったからには、キッズダンスは日本の子供の習い事の1つなんだよということをスタジオ側も把握する必要があるし、そうしないと、ビジネス面から淘汰されて行く状況になっていると思います。
ダンスを習うことだけであれば、ダンスの基本動作やテクニックを教えるだけでよいです。
ただ日本の子供の習い事となったからには、そこだけではダメになるわけです。子供の習い事は習う人が子供なんです。
そう、子供の習い事は習い事を教わりながら人間としても大人になっていかないといけないんです。(というより日本の文化が習い事にそれを求めてきた気がしますし、私自身親になってそれを感じるわけです。)
ダンススタジオにおいて「ダンスをかっこよく踊る」というスキル面や精神論はもはやあたりまえで、今のスタジオやクラスの差別化はそこにプラスアルファのなにがあるのか?な気がしたりします。
それは一人の親の意見として言えば、やっぱり人間力(一言では表せませんが、コミュニケーション能力、協調性、あきらめない粘り強さ、表現方法の自由などなど)なんです。ダンスじゃない業界でも応用できる力なんです。
でも、これって突き詰めるとなかなか難しいことです。指導者としてもそれなりの人生経験も必要ですし、人の価値観にそぐってくるものなんでどうしても合う合わないが出てくる。
でも、視点を変えれば普通の人間(社会人)としてまともであれば、教えれる力であったりもします。
キッズダンスのインストラクターは教育者としてのスキルも必要
キッズはその名のとおり、子供です。まだ成人していません。自分がかっこいいと思うダンスをガンガン踊る先生に憧れ、崇拝するものです。
極端に言えば、先生の価値観がそのまま子供に移行することは普通にあります。
この部分についてはキッズダンスを教えるインストラクターの方は本当に意識した方がいいと思います。
子供は大人と違ってダンスのスキル以外のものもどんどん吸収して行っていることは忘れてはいけません。
大人のダンスインストラクターとキッズのインストラクターとでは求められるスキルが違ってくると思います。
インストラクター側は他人様の子供を預かって教育をしているという意識を持つべきだし、預ける側の親も自分の子供を預けると言う意味で責任を持ってインストラクターやスタジオ選びをするべきだと思います。
インストラクターの価値観と親側の価値観が合わずレッスンに行かなくなったり関係性がこじれたという話はいろいろと耳にしてきました。結果的に被害を受けるのは子供だったりします。
今のキッズ向けインストラクターに望むこと
ここからは、さらに個人的にこれからのキッズ向けのストリートダンスインストラクターに望むことを書いてみます。
ダンスを通して人間としての力を付けさせることも重要
もちろんダンスを習うわけなので、ダンスを教えることが主であるわけですが、やっぱり、ただダンスを教えるだけでなく、ダンスを通して忍耐力だったり、協調性、コミュニケーション力、考え方や応用力などなど、つまり人間力を高めて行けるようなレッスンを意識していただけると親としてはものすごく魅力を感じます。
もちろん、この人間力を付けさせる一番の責任者は親なんですが、親とは違う第3者からの刺激はまた別物として影響を与えるはずです。
ダンスを仕事にする選択肢をきちんと教える
何の世界でもいっしょだと思いますが、自分が没頭することが将来の夢につながることは当たり前です。
小さい頃にダンスにのめり込めば、将来はプロダンサーに憧れるのは普通です。
子供の夢なので、それを否定するのはもってのほかではありますが、例えば、中学生や高校生などのある程度大人な子供に対しては、きちんとダンスを仕事にするということの現実もきちんと教えてほしいと思いますね。
ダンスはアートなので、プロダンサーは言うなればアーティストなわけです。世の中でアーティストとして生計を立てる事は生半可な努力では成功しません。
ダンスにもいろいろな稼ぎ方があります。ダンスが好きならダンスを活かせる将来の道をいろいろな角度から情報を与えてあげて欲しいと思います。
こちらも、もちろん一番情報を与えてあげないといけないのは親ですけどね。
頭を使ったダンスの体得
最後にタイトルだけだとうまく伝わらないと思いますが、ダンスっていうのは体を使うこと以外にも、頭を鍛える要素をたくさん持っていると思っています。
でもレッスンではほとんどが体を動かすことにとどまっている気がしていてキッズ向けとしてはとてももったいないと思うことがしばしばあります。
どいうこととかというと、チームで作品を作るという創造的なところです。
端的に言えば、ある程度踊れるようになれば、発表会の作品は子供達に作らせるべきと私は思います。(もちろんやっているクラスやスタジオさんもあるんでしょうが。)
音楽を聴いて自分なりにチーム構成を考えてフリを作る。これほど脳みそを柔軟に、そして活発に動かすのってなかなかないですよ。
もちろんこれをやりきるにはそれなりと経験とスキルが必要です。できるのは小学生の高学年くらいからでしょう。やるためにはチーム内での役割分担やリーダー役なども重要になってくるし、ある程度の統制やルール作りも重要になります。
でも、これこそがインストラクターが知恵を絞ってうまく子供達に実現できるように(成功体験を作らせる)サポートする点なんじゃないかと思います。
先生の作ったフリを発表会で踊って終わり。これだと、1回の達成感で次の発表会にはもうモチベーションが下がっていると思うんです。
踊れるようになった子には身体を動かすだけのダンスから頭を使うダンスを経験させていくと、モチベーションの維持や人間としてのステップアップにつながるんじゃないでしょうか。
キッズダンスに関して言えば、ただダンスをかっこよく踊る時代は正直終わったのではないかと思っています。
ダンスは子供の才能を引き出す材料をたくさん持っています。
自分の手でショーの作品を作る、さらにはチームメイトと強調しながら作品を作る、という経験を子供達主体でやらせることで、大きな力が付くと思うんです。
今後のスタジオや指導者に求められること
今後、私の子供が大きくなって「ダンスを習いたいのでレッスンに通わせてほしい」と言ってきた時に親としての私はなにをもとに町にたくさんあるダンススタジオの中からスタジオ選びをするのか?
もちろん、選び方は人によりさまざまでしょう。単純に子供が憧れるインストラクターがいる、家から近い、料金が安い、いろいろとあるんですが、私は教えていただくインストラクターの方(またはスタジオ自体)の人間力がどれくらいあるのか?を一番で選ぶ気がします。(もしくは入ってから見定める)
やっぱり子供を成長させたい習い事ですから、ダンスに限らず、考え方、価値観、根性、礼儀などなど、人間としてのベースも合わせて入って来るわけですからそこも気になるわけです。(むしろそっちのほうが気になる)
これはダンスに限らず、子供の習い事であれば、共通して言えることですよね。
どちらにせよ、キッズを扱うのであれば、指導者の人間力やスタジオ方針というのは今後ますます見られる部分になる気がします。
さいごに
いろいろと書きましたが、子供の習い事の仲間入りをしたストリートダンス。そういう意味ではもうストリートダンスという言葉自体が合っていない気がします。
ビジネス面から言えば、今やキッズを扱わなければダンススタジオ自体が成り立たないというところも多いでしょう。
町にダンススタジオがあふれてしまった今、すでにスタジオの淘汰の時代が始まっている気がします。
だからこそ、キッズダンスについて言えば、ストリートカルチャーを脱皮した新たな習い事としてのダンス教育を今のインストラクター陣が築いて行く必要があるんじゃないかと思います。
ストリートダンスが大好きな一人の親として、今後のストリートダンスの発展を願って書いてみました。